終活にかかるお金は?身元保証・任意後見・死後事務委任・遺言を手配すると総額いくら?
終活について調べていると、「公正証書遺言の費用は◯万円」「死後事務委任契約の相場は◯万円」といった記事はいくらでも出てきます。
ところが、実際に必要になるのはそれらのうち1つだけ、ということはほとんどありません。特に身寄りの少ない方の場合、身元保証・任意後見・死後事務委任・遺言の4つがセットで必要になるケースが多いのです。
ではそれを全部そろえると、総額はいくらになるのか。個別の相場は出てくるのに、合計額がどこにも書かれていない。そこが気持ち悪かったので、公開されている料金表や手数料規定を突き合わせて、自分なりに足し算してみました。
先に結論だけ書くと、必要最小限で70万円前後、標準的な内容で250万〜350万円前後、というのが一つの目安になりそうです。ただしこの金額、内訳を知らないまま眺めても意味がありません。順番に見ていきます。
そもそも4つの契約は、何がどう違うのか
金額の話に入る前に、役割分担を整理しておきます。ここが曖昧なまま見積もりを取ると、同じ内容に二重で払うことになりかねません。
困る場面 | 対応する契約 | 効力が働く時期 |
|---|---|---|
入院・施設入居で保証人を求められる | 身元保証 | 生前 |
判断能力が落ちて預金管理や契約ができなくなる | 任意後見契約 | 生前(判断能力低下後) |
葬儀、役所の届出、部屋の片づけを誰がやるか | 死後事務委任契約 | 死後 |
財産を誰に渡すか決めておく | 遺言書 | 死後 |
よくある誤解が「遺言書さえ書いておけば安心」というものです。遺言書は財産の行き先を指定する書類であって、葬儀の手配や携帯電話の解約をしてくれるわけではありません。逆に死後事務委任契約は実務を担いますが、財産の分け方は決められません。
つまり4つは代替関係ではなく、カバーする時間帯が違う。だから全部必要になる人がいるわけです。
① 遺言書(公正証書遺言)の費用
公証役場に払う手数料は2025年10月に改定された
ここは注意が必要です。公証人手数料令が2025年10月1日に改正され、およそ20年ぶりに金額が見直されました。ネット上には改正前の金額のまま更新されていない解説もまだ多く残っています。
改正後の基本手数料は次のとおりです。
目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
50万円以下 | 3,000円 |
50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
200万円超〜500万円以下 | 13,000円 |
500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
この手数料は、財産を受け取る人ごとにその人が受け取る額をあてはめて計算し、全員分を合算します。子ども2人に1,500万円ずつ相続させる遺言なら、26,000円が2人分で52,000円、という数え方です。
これに加えて、財産総額が1億円以下の場合は「遺言加算」として13,000円(改正前は11,000円)が上乗せされます。正本・謄本の作成費用も1枚250円から300円に上がりました。
改正で50万円以下という少額の枠が新設されたので、財産が少ない方はむしろ安くなったケースもあります。全体が値上げになったわけではない、という点は押さえておいていいと思います。
専門家に頼む場合の報酬
公証役場の手数料とは別に、原案づくりを誰かに頼めばその報酬がかかります。公開されている料金表を見比べると、行政書士で5万〜20万円前後、司法書士で8万〜25万円前後、弁護士で10万〜50万円前後というあたりが目安です。信託銀行は遺言執行までパッケージになっている分、100万円を超える設定も珍しくありません。
証人2名も必要です。公証役場に紹介してもらうと1名7,000円〜15,000円程度、専門家に頼むと1名1万円〜5万円程度が相場とされています。
見落とされがちな「遺言執行者の報酬」
遺言書の費用を考えるとき、作成時の金額だけを見て終わりにしてしまう人が多いのですが、実際に大きいのはこちらです。
遺言の内容を実現する役割を担う遺言執行者を専門家に依頼した場合、報酬は相続財産の1〜3%程度、最低報酬を30万円前後に設定している事務所が多く見られます。財産3,000万円で1%なら30万円、3%なら90万円。作成費用より高くなることもあるわけです。
これは死後に相続財産から支払われるお金なので、本人の生前の持ち出しにはなりません。ただ「遺した財産から引かれる」ことに変わりはないので、総額の話をするなら勘定に入れておくべきだと思います。
② 任意後見契約の費用
契約するだけなら、実はかなり安い
任意後見契約は、判断能力があるうちに「将来これが落ちたら、この人に財産管理を任せます」と約束しておく契約です。公正証書で作ることが法律で決められています。
契約時にかかる公証役場の実費は次のとおりです。
費目 | 金額 |
|---|---|
公正証書作成手数料 | 1契約につき13,000円(改正前11,000円) |
登記嘱託手数料 | 1,600円(改正前1,400円) |
登記印紙代 | 2,600円 |
正本・謄本代など | 数千円程度 |
合計で2万〜3万円程度。契約書の原案作成を専門家に頼むと、これに10万円前後から、というのが一つの目安になります。
問題は発効した後の月額
ここが総額を決める最大の分岐点です。
任意後見契約は、結んだだけでは効力が発生しません。本人の判断能力が実際に低下し、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任して初めてスタートします。そして発効すると、2種類の報酬が本人が亡くなるまで毎月かかり続けます。
一つは任意後見人への報酬で、専門家に頼む場合は月2万〜5万円程度が多いとされます。家族が引き受けて無報酬と定めることもできます。
もう一つが任意後見監督人への報酬です。これは家庭裁判所が決めるもので、こちらが交渉して下げることはできません。東京家庭裁判所が公表しているめやすでは、管理する財産が5,000万円以下なら月1万〜2万円、5,000万円を超えるなら月2万5,000円〜3万円とされています。
仮に監督人報酬を月2万円として、発効から10年続いたとします。それだけで約240万円。任意後見人にも月3万円払っていれば、10年で合計600万円に達します。
契約時の2万〜3万円という数字と、この桁の違いを並べて理解しておくことが大事だと思います。逆に言えば、判断能力が保たれたまま亡くなれば契約は発効せず、支払った初期費用は戻らないかわりにそれ以上の負担も発生しません。
③ 死後事務委任契約の費用
葬儀の手配、役所への死亡届、年金や健康保険の手続き、公共料金の解約、施設の退去精算、遺品整理。こうした死後の実務を、生前に頼んでおく契約です。
費用は3つの層に分かれます。
層 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
契約書作成費 | 原案作成の専門家報酬+公正証書化 | 数万円〜30万円程度 |
執行報酬 | 実際に死後事務を行う対価 | 30万〜100万円程度 |
実費(預託金) | 葬儀・納骨・遺品整理などの実費 | 70万〜200万円程度 |
なお2025年10月の改正で、死後事務委任契約の公正証書手数料は先ほどの基本手数料表の「10分の5」とされました。この点に触れている解説はまだ少ないので、見積もりを比較するときの目線として持っておくといいと思います。
預託型と精算型の違いは確認したほうがいい
実費部分の扱いには2通りあります。生前にまとめて預けておく預託型と、死後に相続財産から精算する精算型です。
預託型は確実性が高い一方、事業者に100万円以上を長期間預けることになるため、その資金が信託口座などで分別管理されているかどうかが重要になります。精算型は初期の持ち出しが小さく済みますが、精算できるだけの財産が残っている前提の設計です。
どちらが良いという話ではなく、自分の財産状況と、その事業者が長く続きそうかどうかで選ぶ問題だと思います。
④ 身元保証サービスの費用
入院や施設入居のときに求められる身元保証人を、事業者が引き受けるサービスです。4つのなかで最も料金体系がバラバラで、比較が難しい領域でもあります。
実際に公開されている料金例をいくつか並べてみます。
費目 | 金額の例 |
|---|---|
入会金 | 1万円〜3万円程度 |
事務管理費・運営管理料 | 50万〜66万円程度 |
身元保証料 | 33万円前後(預託金扱いの場合あり) |
年会費・月額 | 年1万円程度、または月1万円前後 |
生活支援の都度料金 | 1時間3,000円〜5,500円程度 |
大手の料金表を見ると、身元保証部分だけで初期費用80万円前後という設定が複数あります。そこに葬儀・死後事務の預託金50万円前後が加わる構成が一般的です。総額では100万〜150万円あたりに収まるケースが多いようですが、預託金を100万〜300万円求める事業者もあり、幅は相当あります。
一方で、初期費用33万円+月額1.1万円というように、高額な預託金を取らない方式の事業者も出てきています。安いから良いという単純な話ではなく、その金額に何が含まれているのかを見ないと比較になりません。
ぜんぶ足すと、いくらになるのか
ここまでの数字を組み合わせて、3つのパターンで試算してみます。生前に実際に支払う金額を中心に、死後に財産から出ていくものは別枠で示しました。
ケースA:最小限 | ケースB:標準 | ケースC:手厚く | |
|---|---|---|---|
想定 | 家族がいる。遺言だけ整える | おひとりさま。4点セット | おひとりさま。生活支援も依頼 |
遺言書 | 15万円前後 | 15万円前後 | 25万円前後 |
任意後見(契約時) | — | 13万円前後 | 13万円前後 |
死後事務委任 | — | 契約20万+報酬50万 | 契約30万+報酬80万 |
実費・預託金 | — | 80万円前後(直葬・少量) | 150万円前後 |
身元保証 | — | 80万円前後 | 110万円前後 |
生前の支払い合計 | 約15万円 | 約258万円 | 約408万円 |
別途、発効後の月額 | — | 月1万〜2万円 | 月3万〜5万円 |
別途、死後に財産から | 遺言執行報酬30万〜 | 遺言執行報酬30万〜 | 遺言執行報酬30万〜 |
この表で伝えたいのは金額そのものより、構造のほうです。生前に一度払って終わりのお金と、毎月出ていくお金と、死んだあとに財産から引かれるお金。この3種類が混ざっているせいで、「終活の費用」は見積もりが取りづらくなっています。
総額が膨らむのは、だいたいこの3か所
1. 判断能力が落ちた後の月額
すでに書いたとおり、任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めるもので、発効後は本人が亡くなるまで続きます。契約時の数万円だけを見て判断すると、あとから想定外になります。
10年で240万円という金額を先に知ったうえで、それでも必要かを考えるべき制度だと思います。
2. 預託金の二重計上
身元保証サービスのパッケージに死後事務支援が含まれていて、そこに葬儀費用の預託金が設定されている。そのうえで別の事業者と死後事務委任契約を結び、そちらにも預託金を入れる。こういう重複が起きます。
葬儀は一度しか行われないのに、その原資を二か所に預けている状態です。バラバラに契約していると、本人も家族も気づきにくい。
3. 「初期費用が安い」の中身
初期費用を抑えた料金体系の事業者が増えていますが、そのぶん生活支援が都度課金だったり、葬儀費用が別枠だったりします。1時間3,000円という表記も、それが専門職の1時間なのかスタッフの1時間なのかで意味が変わります。
比較すべきは金額の大小ではなく、「その金額で何がどこまで含まれるか」です。
バラバラに手配することの、本当のコスト
ここまで見てきて感じたのは、4つの契約を別々の相手に頼むことのデメリットが、金額以外のところにもあるということです。
遺言書は行政書士、任意後見は司法書士、身元保証は民間事業者、葬儀は葬儀社。それぞれが自分の担当範囲では正しく仕事をしていても、相互の内容が噛み合っているかを確認する人がどこにもいません。
実際、遺言執行者と死後事務受任者が別人で、財産の引き出し権限をめぐって手続きが止まるケースや、遺言書には「葬儀は家族葬で」と書いてあるのに死後事務委任契約では直葬の預託金しか積んでいない、といったズレが起きます。本人が亡くなった後に発覚しても、直しようがありません。
そう考えると、4つをまとめて設計できる窓口に一度相談して全体像を出してもらうほうが、結果的に安く、確実になる可能性が高いと思います。大阪の吹田・豊中・箕面あたりだと、終活の相談をワンストップで受けている窓口もあるので、個別に見積もりを集める前に一度そこで全体を整理してもらうという進め方もあります。
見積もりを取るときは、次の4点だけは必ず聞いておくといいと思います。
・生前に払う金額と、死後に財産から引かれる金額を分けて出してもらう
・預託金がある場合、分別管理か信託かを確認する
・任意後見が発効した後の月額の見込みを聞く
・途中で解約したときに何がいくら戻るかを確認する
まとめ
終活の費用は、個別に調べると数万円から数十万円という数字ばかり目に入りますが、必要な契約をひととおりそろえると生前の支払いだけで250万円前後、内容によっては400万円を超えます。
そのうえで、任意後見が発効すれば毎月の報酬が加わり、死後には遺言執行の報酬が財産から引かれます。この3層構造を先に把握しておくだけで、見積もりの読み方はだいぶ変わるはずです。
金額の安さで選ぶのではなく、含まれる範囲と、その事業者が自分より長く続きそうかどうか。判断の軸はこの2つに絞っていいと思います。
※本記事の金額は、公証人手数料令および各事業者が公開している料金表をもとにした目安です。実際の費用は契約内容・財産状況・依頼先によって変わります。具体的な手続きについては、専門家にご相談ください。
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