シロアリ駆除の「無料点検」で契約を迫られたときの断り方
今日はシロアリ駆除についての断り方についてお話します。よくあるのが、無料点検後に、床下から出てきた作業員が、スマホの画像を見せてきます。
「ここ、もう食われてますね。放っておくと床が抜けます」
「今日契約していただければキャンペーン価格で」
写真には確かに、黒ずんだ木材と何かの痕跡が写っている。自分の家の床下を見たことはないので、違うとも言えない。
この状況で冷静に断れる人は、そう多くないと思います。
ただ、断り方には型があります。そして万一契約してしまっても、取り消せる制度が用意されています。順番に整理します。
先に結論だけ
・その場で言うことは「今日は決めません」の一言だけでいい
・理由を説明すると、反論の材料を渡すことになる
・契約してしまっても書面を受け取ってから8日間はクーリング・オフできる
・工事が終わった後でも、期間内なら無条件で解除できる
・書面を渡されていなければ、8日を過ぎてもクーリング・オフできる
・被害が本当にあった場合でも、相見積もりを取れば適正価格が見える
なぜ「無料点検」の後は断りにくいのか
これには「点検商法」という呼び名がついている
まず知っておいてほしいのは、この手口には名前があるということです。
各地の消費生活センターが「点検商法」として繰り返し注意喚起を出しています。シロアリ、床下の湿気、屋根、給湯器。対象は変わりますが、構造は同じです。
つまり、あなたが断りにくいと感じているのは性格の問題ではありません。断りにくいように設計された流れだからです。
典型的な流れ
実際の相談事例を並べると、だいたい次のように進みます。
突然の訪問から始まります。「近所で工事をしている」「無料で点検している」といった入り方が多く、シロアリではなく屋根や給湯器の話から入ってくることもあります。
点検自体は無料なので、断る理由が見つかりません。ここで家に上げてしまうと、次の段階に進みます。
床下から戻ってきた作業員が、写真や動画を見せながら深刻さを伝えます。「柱がスカスカ」「今なら間に合う」。床下は自分で確認できないので、反証のしようがありません。
そして最後に、時間の圧力がかかります。今日中、今月中、今なら割引。考える時間を与えないことが目的です。
このうち、判断を誤らせている要素は時間の圧力だけです。そこさえ外せば、あとは落ち着いて確かめられます。
その場で使える断り方
1. 言うことは「今日は決めません」だけでいい
もっとも効く一言です。
契約しないと言い切る必要はありません。今日は決めない、とだけ伝えます。断定を避けているぶん角が立たず、しかも相手の目的である即決だけを確実に外せます。
「見積書だけ置いていってください。検討します」と続ければ、会話としても自然に終わります。
2. 理由を説明しない
ここが重要です。
「お金がない」と言えば分割払いを提案されます。「妻と相談したい」と言えば電話をかけるよう促されます。「他社と比べたい」と言えば他社の悪い点を説明されます。
営業の訓練を受けている相手に理由を伝えることは、反論の材料を渡すことと同じです。
理由は言わない。「今日は決めません」を繰り返す。同じ言葉を繰り返されると、相手は打つ手がなくなります。
3. その場にいない人を持ち出す
それでも粘られる場合、判断権が自分にないという形にすると話が終わります。
「家の名義が私ではないので」「子どもに相談してからでないと決められない決まりにしています」
実際にそうである必要はありません。相手にとって説得不可能な相手が登場した時点で、その場での成約は諦めることになります。
4. 点検結果は書面でもらう
断るだけでなく、こう言ってみてください。
「点検結果を書面でください。被害箇所と範囲、使用する薬剤名、施工面積、保証内容を書いたものをお願いします」
これは断り文句としても機能しますが、それ以上に判別の材料になります。
きちんとした業者なら、調査報告書は当然出てきます。口頭と写真だけで金額を提示し、書面を渋る相手なら、その時点で判断はつきます。
5. 帰ってくれないとき
玄関先から動かない、居座る。この場合は無理に相手をする必要はありません。
消費者が帰ってほしいと伝えたのに帰らない行為は、それ自体が法律上問題になります。「お引き取りください」とはっきり伝え、それでも動かないなら警察に通報して構いません。
やり取りを録音しておくと、後の相談でも役に立ちます。
契約してしまった後でも、取り消せる
すでに署名してしまった方へ。まだ手はあります。
クーリング・オフの基本
訪問をきっかけに結んだ契約は、特定商取引法上の訪問販売に該当します。点検商法もここに含まれます。
この場合、契約内容を記載した法定書面を受け取った日から8日間は、無条件で契約を解除できます。
押さえておきたい点がいくつかあります。
よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
工事が終わったら解除できない | 期間内なら施工後でも解除できる |
理由を説明しないといけない | 理由は不要。無条件で解除できる |
違約金を取られる | 違約金や損害賠償は請求されない |
支払ったお金は戻らない | 支払い済みの金額は返還される |
原状回復は自己負担 | 撤去などの費用は事業者の負担 |
8日を過ぎていても諦めない
起算日は「契約した日」ではなく「法定書面を受け取った日」です。
そのため、書面を渡されていない場合や、記載内容に不備がある場合は、8日を過ぎていてもクーリング・オフができます。期間が始まっていないからです。
また、事業者が「もう解約できません」と嘘を言って妨害した場合も、期間経過後に行使できるとされています。
まず、渡された書類を確認してみてください。
通知の出し方
口頭では足りません。記録が残る形で通知します。
はがきに契約日、契約した商品やサービス名、金額、事業者名、そしてクーリング・オフする旨を書きます。両面のコピーを取ったうえで、特定記録郵便か簡易書留で送ります。
2022年6月からは、メールなど電磁的な方法での通知も認められています。送信画面のスクリーンショットを残しておいてください。
クレジット契約を使っている場合は、信販会社にも同じ通知を出します。
期間を過ぎていても、別の手がある
不安をあおる説明を受けた、帰ってくれなかった、事実と違う説明をされた。こうした事情があれば、消費者契約法による取消を主張できる場合があります。
判断が難しいところなので、自分で決めずに消費生活センターへ相談してください。全国共通の消費者ホットライン188に電話すれば、最寄りの窓口につながります。
「でも、本当に被害があったらどうするの」
ここが一番悩ましいところだと思います。
断ったのはいいけれど、指摘された内容が事実だったら。放置して家が傷んだら。
その不安は正しいです。訪問してきた業者が悪質だったことと、自分の家にシロアリがいないことは、別の話だからです。
確かめる方法は相見積もりしかない
床下は素人が確認できません。だから「本当に被害があるのか」「その金額は妥当なのか」を判定する方法は、実質的にひとつです。
別の業者にも見てもらうこと。
シロアリ駆除の費用は施工面積で計算されるのが一般的で、坪単価には大きな幅があります。各種の調査を見ると、1坪あたり数千円から1万円超まで開きがあり、同じ家でも依頼先によって総額が倍以上変わることは珍しくありません。
2社目の見積もりを取るだけで、次のことがわかります。
・被害の有無と範囲が一致するか(被害箇所の指摘がまったく違えば、どちらかの調査が雑)
・坪単価が相場から外れていないか
・保証年数と保証内容が釣り合っているか
・見積書に施工面積と薬剤名が明記されているか
1社ずつ電話して日程を調整するのは正直しんどいので、複数社の見積もりをまとめて取れるサービスを使う人も増えています。実際にそうしたサービスを使った場合の流れや注意点は、一括見積もりサービスの評判と使い方をまとめた記事に整理されています。訪問業者に言われた金額が妥当かどうかを確かめる目的なら、まずはここから当たりをつけるのが早いと思います。
急かされている時点で、急ぐ必要はない
ひとつだけ、覚えておいてほしいことがあります。
シロアリの被害は、数年かけて進行します。今日契約しないと手遅れになる、という状況はまず存在しません。
「今日中に決めてください」と言われた時点で、その緊急性は営業上の演出だと考えて差し支えないと思います。
そもそも訪問を入口にしない
最後に、予防の話を少しだけ。
点検商法が成立するのは、自分の家の状態を知らないからです。逆に言えば、状態を把握していれば刺さりません。
シロアリ対策の薬剤は5年程度で効果が切れるとされているので、新築や前回施工から5年前後が経過しているなら、自分が選んだ業者に点検を依頼しておくのがいちばん確実です。
先に依頼先を決めておけば、突然の訪問に対して「うちは決まったところに頼んでいます」と答えるだけで済みます。
あわせて、4月から7月にかけて羽アリを見かけたときは早めに調べてください。ヤマトシロアリは春の日中、イエシロアリは初夏の夕方以降に群飛する傾向があり、この時期の羽アリは巣が近くにあるサインのことがあります。
まとめ
無料点検の後に契約を迫られたら、言うことは「今日は決めません」だけです。理由は説明しない。見積書と調査報告書を書面でもらって帰ってもらう。
契約してしまっても、法定書面を受け取ってから8日間はクーリング・オフができます。工事が終わっていても、理由がなくても解除できます。書面を渡されていなければ、8日を過ぎても行使できます。
そして、断ったうえで別の業者に見てもらってください。被害の有無も、金額の妥当性も、それでしか判断できません。
迷ったら188に電話する。それだけ覚えておけば、大きな失敗にはならないはずです。
※本記事は一般的な制度の説明です。クーリング・オフの可否や取消の主張は個別の契約内容によって判断が分かれます。実際の対応については、お住まいの地域の消費生活センターにご相談ください。
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